2-2-1 展覧会記録 (2018年)

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▶ 2010年   ▶ 2009年


 ■2018年  展覧会  ■2018年  美術館大学、授賞式
第27回企画展


 5/12(土)〜9/30(日)
 Takashi Akiyama Poster-10
 秋山孝の神秘4「印刷すること」「手描きすること」展

 ●5/12(土)
      第41回美術館大学
      「秋山孝の神秘『印刷すること』『手描きすること』について1」
     時間:pm3:00~4:30
     講師:秋山孝
     進行:たかだみつみ
     受講料:無料


 ●7/7(土)
     第42回美術館大学
     「秋山孝の神秘『印刷すること』『手描きすること』について2」
     時間:pm3:00~4:30
     講師:秋山孝
     進行:たかだみつみ
     受講料:無料


 ●8/1(水)
     第43回美術館大学
     「越後発酵の技法・作法」
     時間:pm3:00~4:30
     講師:小笠原渉
     受講料:無料


特別展


 10/6(土)〜10/28(日)
 日本ブックデザイン賞2018


 ●10/13(土)
  日本ブックデザイン賞 授賞式
     時間:pm2:30-


第28回企画展


 11/3(土)〜11/25(日)
 多摩美術大学大学院イラストレーションスタディーズ
 「メッセージイラストレーションポスター」展10

 ●11/3(土)
     第44回美術館大学
     「日本ブックデザイン賞2018について」
     時間:pm3:00-4:00
     講師:秋山孝、高橋庸平
     受講料:無料

企画展協力 / 長岡市立上組小学校6年生企画展
「いいねぇ上組地域の宝~受け継がれてきた歴史に感謝~」

  • 日  時:2019年 1月 19日(土) 13:00~15:00
  • 展示場所:アオーレ長岡1階 ホワイエ・ホールA



2019年1月19日(土)、新潟県長岡市のアオーレ長岡の1階にあるホワイエ・ホールAにて、長岡市立上組小学校(上組小)6年生による企画展「いいねぇ上組地域の宝~受け継がれてきた歴史に感謝~」が開催された。上組地域とは上組小の学区であり、児童の生まれ育った地域である。秋山孝ポスター美術館長岡(APM)は、6年生より建物の外観、内観の写真を撮影させてほしいという依頼を受け、企画展に協力した。
撮影当日は3名の6年生がAPMを訪れた。スタッフに挨拶をした後、APM館内の一番魅力的な場所を考えながら撮影を始めた。APM滞在時間はほんの10分程度だったが、どの角度から撮影するか3人で話し合いつつ進めていた。
企画展はアオーレ長岡の正面広場から少し進んだところにあるホワイエ・ホールAで行われた。広場では数人の6年生が道行く人に声をかけ、展示を見ていってもらうよう誘導する姿が見られた。ホール入り口には受付が設置され、記名すると手作りのしおりをいただいた。しおりには、6年生が撮影したと思われる上組地域の写真が使われていた。
ホール内はいくつかのブースに分かれていて、そのひとつひとつに上組地域のスポットが展示されていた。各ブースには6年生が描いた上組地域の風景画(上組地域八十景)や、そのスポットがどこにあるかを示す手作りの地図、そのスポットにまつわるクイズなども一緒に展示してあった。また、各ブースには6年生が待機しており、自分たちの考える各スポットの魅力を説明したり、上組地域八十景の自分の作品について解説したりして来場者を楽しませていた。
企画展「いいねぇ上組地域の宝~受け継がれてきた歴史に感謝~」は、6年生が「総合的な学習の時間」の中で取り組んできた活動である。自分たちが育った地域の魅力を見つけ、それを絵画で表現し、作品解説で伝えていた。APMのブースでは、APMの外壁のレンガが魅力だと考え、ひとつひとつ色を塗り分けたと作品を解説していた。確かにAPMの南側外壁は左右で微妙に色が異なる。よく見ないと気付かない部分だがしっかりと表現されていた。当日の役割は作品解説だけではない。前述した誘導や受付の他、アンケートをお願いする担当もおり、積極的に声掛けをしていた。それぞれがそれぞれの役割の中で来場者に楽しんでもらおうと行動していた。そのような企画展に協力できたことはAPMにとっても喜ばしい。彼らにとってAPMは、上組地域の魅力的な場所のひとつであり、地域内外の人々にその魅力を伝えるべき場所であると考えられている。これからもAPMが地域の誇りであるよう活動していきたい。(森山奈帆・APM職員)



第28回企画展 秋山孝ポスター美術館長岡(APM)
10. Message Illustration Poster in Nagaoka / Tama Art University Illustration Studies
多摩美術大学大学院イラストレーションスタディーズ / メッセージイラストレーションポスター展10
2018.11.03(sat)-11.25(sun)







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会場の様子


正面の壁(東側壁面)

火の壁(北側壁面)

地の壁(南側壁面)

美の壁(西側壁面)

第44回美術館大学

  • 日  時:2018年 11月 3日(土)pm3:00-4:30
  • 場  所:秋山孝ポスター美術館長岡
  • 講  師:秋山孝、高橋庸平
  • 進  行:たかだみつみ
  • 題  目:日本ブックデザイン賞2018について
  • 参加者数:28名



第44回美術館大学は、4回目となる秋山孝ポスター美術館長岡(APM)主催で開催したコンペティション・日本ブックデザイン賞(JBD)について、展示風景、授賞式、審査会の様子や受賞作品の画像を見ながら振り返った。講師はJBD審査委員長の秋山孝APM館長と、毎年JBDに出品し、今回は新設したポスター部門で受賞をされた高橋庸平氏だ。
JBDは本におけるデザインの価値をあらためて社会に提案することを目的としたコンペティションである。その中で優れた先人や、現在活躍している創作者に対してホール・オブ・フェイム(名誉の殿堂)を設立している。今回、第4号に恩地孝四郎を定めた。恩地は日本の抽象絵画の創始者とされ、木版を主な表現手段として、数多くの本の装幀を手掛けた。自身も執筆を行い、著作『本の美術』では装本の美学について解説し、業界において貴重な資料となった。日本には古来よりパッケージを重要視する文化があり、それにより美しい優れた装幀の本が生み出されてきたと秋山は語る。ホール・オブ・フェイムは日本独自の文化としてのブックデザインを見いだし、その文化を社会に認識してほしいという願いが込められている。
講演の本編でも、質疑応答でも「デジタル化」が話題に多くのぼったのが印象的であった。
昨今、様々なものがデジタル化している時代において本もそれに当てはまる。電子書籍という新しい本の形が生まれた。時代の流れにおいて形が変わっていくのは自然なことである。しかし、実体のある本の存在は縮小はするものの絶滅はしない、と秋山は強く断言する。それは、データは形が無く、ちょっとした操作ミスや災害などで一瞬にして消えてしまう儚いものである一方、紙に印刷された実体のある本の存在は強いと信じているからだ。また、ギリシャ古来から続く、歴史を紙に記録し残す、ということの重要性を忘れてはならないと秋山は考えている。紙による本の存在が危ぶまれる中、この重要なコンテンツの価値を再認識し守り発展させる為にJBDを開催している。ある意味、後ろを向いた提案型のコンペティションかもしれないと秋山は語る。一方で、今回から応募方法が作品をデータで提出する形となった。それにより応募者の負担や審査などにおける作業効率が格段と向上した。
本はいろいろな要素の関係性でできている。経済や社会が目まぐるしく変化する中で、デザイナー、イラストレーター、作家、出版社……が生き残っていく為の方法を考え続けなければならない。新しいものを上手く取り入れつつ、価値のあるものを残すための模索、提案を力の続く限りやり続けたいと秋山は誓った。(たかだみつみ・APM学芸員)

メッセージイラストレーションポスター展10 開催記念懇親会

  • 日  時:2018年 11月 3日(土)pm5:00-7:00
  • 場  所:秋山孝ポスター美術館長岡
  • 参加者数:28名



「メッセージイラストレーションポスター展10」開催を記念して、懇親会を開催しました。


メッセージイラストレーションポスター展10 掲載情報

■2018.10.26  「HOT PEPPER 2018年11月号」 p.5




The Japan Book Design Award 2018
日本ブックデザイン賞2018
作品展 10/6(日)~10/28(土)









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会場の様子(APM)


正面の壁(東側壁面)

火の壁(北側壁面)

地の壁(南側壁面)

美の壁(西側壁面)

会場の様子(蔵)


東側壁面

北側壁面

南側壁面

西側壁面

日本ブックデザイン賞2018 作品展示および授賞式

  • 展示期間:2018年 10月 6日(土)~28日(日)
  • 授 賞 式:2018年 10月 13日(土)pm2:30-5:00 / 列席者数:89名
  • 場  所:秋山孝ポスター美術館長岡



今年も秋山孝ポスター美術館長岡(APM)主催のコンペティション・日本ブックデザイン賞(JBD)を開催した。今回で4回目となった。応募総数418点(一般の部:196点、学生の部:222点)の内、厳選なる審査の結果決定した入賞・入選作品全247点(一般の部:136点、学生の部:111点)をAPMにて展示した。展示期間中の10月13日(土)には授賞式も執り行った。
JBD2018の特徴は、応募部門にポスター部門が加わったことと、応募作品がデータでのエントリーになったこと(ブックデザイン・セルフパブリッシング部門、ブックデザイン・パブリッシング部門を除く)だ。ポスター部門は秋山館長がずっと設置を切望していた部門だ。ポスター専門の美術館が主催するコンペティションとしてより意味のある内容となった。
今年の授賞式も全国から多くの方にご列席いただき盛大な式となった。APM館長・審査委員長の秋山孝は挨拶で、本のコンペティションは難しいと言われている中、長岡という地方の町で4回目の開催を迎えられたことへの感謝を述べた。それは応募者をはじめ、関わっている方々の意思や意識の高さ故であると強く感じ、この先も工夫と改善を繰り返し、力の続く限り継続していきたいと語った。続くAPM運営委員会副会長・牧野忠昌氏の挨拶、長岡市副市長・水澤千秋氏と協賛の北越コーポレーション株式会社長岡工場長・谷口喜三雄氏の祝辞では、いずれも長岡市の歴史を絡めたお話を頂戴し、長岡市が歴史と共に文化が育まれ続けている地であるということを再認識した。谷口氏の祝辞の際には、今年も協賛いただいたことへの感謝状を贈呈した。
賞状授与では、受賞者がそれぞれ受賞の喜びや今後の活動への意気込みの言葉を語った。また、授賞式後の懇親会では、列席した入選者への賞状授与も行い、皆さんの喜びの表情で会場はいっぱいとなった。
懇親会では審査員の方からお話しいただくのが恒例となっているが、応募者の方々にとっては、とても興味深い時間ではないだろうか。その中で大迫修三氏は、主張が強い作品や挑戦的な作品をみることができるのでJBDの審査は面白いと感想を述べられた。
JBDは来年5周年を迎える。同時にAPMも創立10周年という節目の年だ。懇親会でのNPO法人ながおか未来創造ネットワーク・笠原典明氏の祝辞で、JBD2019の作品展示をAPMだけでなく、長岡駅前にあるシティホールプラザ・アオーレ長岡でも開催する計画が進行中であることが発表された。ますますパワーアップするJBDへの期待が高まる中、JBD2018は幕を閉じた。(たかだみつみ・APM学芸員)



建築士の日・長岡まちなみ魅力発見隊 合同開催

  • 日  時:2018年 9月 29日(土) 13:15~13:45
  • 場  所:秋山孝ポスター美術館長岡
  • 参加者:24名



2018年9月29日(土)、新潟県建築士会長岡支部による「建築士の日・長岡まちなみ魅力発見隊 合同開催」が行われた。山古志地域を中心とした長岡市内を見学し、美しい山里・山古志の魅力と、中越地震から14年の復興の道程を、各地を巡りながら特別講師の渡辺斉氏が解説するというイベントである。
山古志地域では、稲刈り前の棚田や、水没した木籠集落の他、虫亀地区の「写真の家」、直売所「郷見庵」、やまこし復興交流館おらたる、山古志竹沢復興公営住宅などを見学する。秋山孝ポスター美術館長岡(APM)も見学場所のひとつとして行程に組み込まれ、参加者が訪れた。
APMは1925年 (大正14)に建てられた大正モダニズム建築である。長岡商業銀行として建てられたこの歴史的建造物は、1929年(昭和4)に六十九銀行に合併、1942年(昭和17)に北越銀行宮内支店、1970年(昭和45)には田上商店倉庫となり、2009年(平成21)にAPMとして開館した。APMとなってからも2009年の長岡市都市景観賞受賞や2016年(平成28)に国の登録有形文化財登録など歴史を刻んできた。APMのリノベーションを請け負った㈱高田建築事務所の会長であり、APMサポーターズ倶楽部会長の高田清太郎氏は、APMを開館することになった経緯や、リノベーション時の苦労などを説明した。
2004年(平成16)には中越地震があり、APMも被害を受けた。美術館として開館する前だが建物は存在しており、新潟県内で約3,000もの家屋が全壊する中、大正生まれのAPMは倒壊することなく残った。その後、リノベーションを経て美術館へと生まれ変わるのだが、南側外壁の窓ガラスはひび割れたままになっている。これは中越地震の時にできた亀裂で、現在は危険でないよう保護のガラスが設置されている。このガラスのひび割れが魅力的だと私は思う。APMを案内するとき、職員が雄弁に解説するよりも、ひび割れたガラスがただそこにあるだけで説得力が生まれる。長岡まちなみ魅力発見隊の参加者も興味深そうにそのガラスを眺めていた。
APMの建造物には93年の歴史がある。銀行だったころ、倉庫だったころ、そして今は美術館である。戦争も地震も経験し、宮内の町とともに年を重ねてきた。これからも新しい歴史を重ねつつ、今までの歴史を伝え続けていきたい。(森山奈帆・APM職員)



水と土の芸術祭 2018
地震ポスター展
中之口先人館 先人館ギャラリー
2018.8.18(土)~9.30(日)







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会場の様子


東側壁面

北側壁面

南側壁面

西側壁面

地震ポスター展 作品解説

  • 日  時:2018年 8月 25日(土)pm2:00-3:00
  • 場  所:中之口先人館 先人館ギャラリー
  • 講  師:秋山孝、高橋庸平、堀池真美、たかだみつみ、大町駿介、鷲尾恵一、橋村実里
  • 参加者数:約20名



2018年8月18日(土)~9月30日(日)、新潟県西蒲区にある中之口先人館の先人館ギャラリーにおいて「水と土の芸術祭2018 地震ポスター展」を開催した。中之口先人館での展示は、昨年に引き続き2回目である。今回は3年に1度、新潟市内で開催されている「水と土の芸術祭」の会期中であった。
地震ポスター展では、多摩美術大学・教授であり、秋山孝ポスター美術館長岡(APM)の館長・秋山孝が始めた「地震ポスター支援プロジェクト」のコレクションの中から厳選した64点を展示した。地震ポスター支援プロジェクトとは、災害支援においてデザイナーのできることは何かということから、ポスターの力を使い災害を忘れず記録することを目的にスタートしたプロジェクトである。きっかけは2004年10月23日に新潟県中越地方で発生した最大震度7の中越地震である。故郷・長岡市が被災したことを受け、秋山館長が同年12月にスタートした。
8月25日(土)には関連イベントとして、出品者による作品解説が行われた。秋山館長の他、高橋庸平氏、堀池真美氏、たかだみつみ氏、大町駿介氏、鷲尾恵一氏、橋村実里氏ら出品者が自身の作品を解説した。また、地震ポスター展の意義についても説明があった。日本には多くの地震の記録が残っており、古いものは416年にまで遡る。それ以降も数え切れぬほどの地震が日本を襲い、それらが記録に残されている。それにもかかわらず、我々人間はすぐに忘れてしまう。だからこそ、ポスターの力を使って災害の記録を風化させないよう訴え続けることが大切であると秋山館長は述べた。
今年は中越地震発生から14年目である。秋山館長が語った通り、当時の記憶はしだいに薄れ、断片的となってくる。人間は忘却していくものだからそれも仕方ない。ただ、忘れたままにするのではなく思い出し、どう対処するか考えることが大事なのではないか。秋山館長らの地震ポスターは災害を忘れてはならないとメッセージを発信している。そのメッセージを受け取った私たちはどうするべきなのかが問われているように感じた。(森山奈帆・APM職員)



第27回企画展 秋山孝ポスター美術館長岡(APM)
Takashi Akiyama Poster-10
秋山孝の神秘4「印刷すること」「手描きすること」展
2018.5.12(sat)-9.16(sun)





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会場の様子


正面の壁(東側壁面)

火の壁(北側壁面)

地の壁(南側壁面)

美の壁(西側壁面)

プレスリリース

秋山孝の神秘4「印刷すること」「手描きすること」展 プレスリリース vol.1

第43回美術館大学

  • 日  時:2018年 8月 1日(水)pm3:00-4:30
  • 場  所:秋山孝ポスター美術館長岡
  • 講  師:小笠原渉、北原雪菜
  • 題  目:越後発酵の技法・作法
  • 参加者数:77名



2018年8月1日(水)、秋山孝ポスター美術館長岡(APM)において第43回美術館大学を開催した。「越後発酵の技法・作法」をテーマに、長岡技術科学大学・教授の小笠原渉氏から講演していただいた。
最初に、小笠原氏の研究室で学んでいる長岡技術科学大学修士課程1年の北原雪菜氏が小笠原研究室の取り組んでいる研究内容を説明した。小笠原研究室では「糸状菌(カビ)」「油脂生産酵母」「細菌にのみ存在する酵素」についての、3つの研究を行っている。微生物の生き方を学び、それを人間の生活に生かしていくものである。また、「発酵を科学する」アイディア・コンテストや、カビに関する学会の企画・運営なども行っているという。
続いて小笠原氏による講演は、発酵とは何かについての説明から始まった。発酵とは微生物の働きによって物質が変化することをさす。その変化が人間にとって有益なら「発酵」、有害なら「腐敗」であると小笠原氏は説明する。さらに、その分類はあくまでも人間にとってであり、微生物にとってはどちらも同じ「発酵」であるとも付け加えた。近年は微生物による働きを利用した様々なものが生み出され、その中にはコンクリートのヒビを微生物の働きによって自然修復するものもあるという。
次に、新潟県の発酵文化の特徴について説明した。新潟県特有の発酵食品として妙高市の「かんずり」を挙げ、その他にも日本酒やワインなども盛んであると述べた。かんずりとは唐辛子から作る発酵調味料で、塩漬けした唐辛子を大寒の時期に雪上に撒き、灰汁抜き・塩抜きをする「雪さらし」という作業を行うことが特徴である。実はワイン作りも古くから取り組んでおり、上越市の岩の原葡萄園は1890年創業である。小笠原氏は新潟県における発酵文化の源を土壌であり、何より水と雪であると述べた。新潟県を流れる信濃川の恵みが、かんずりやワイン、日本酒といった文化を育んだと述べた。
また、新潟の発酵・醸造分野の偉人として坂口謹一郎を挙げている。坂口は新潟県高田(現・上越市)の出身で、「酒の博士」として知られている。サントリーの創業者・鳥井信治郎がワイン醸造を始めようとしたとき、岩の原葡萄園の創業者・川上善兵衛と結び付けた人物としても知られていると小笠原氏は述べた。
話は、APMがある宮内の隣の集落、摂田屋に及んだ。摂田屋は醸造のまちと呼ばれ、酒、みそ、しょうゆなどの発酵文化が今も息づく町である。その摂田屋にある機那サフラン酒本舗の土地・建物を長岡市が取得し、整備することとなった。機那サフラン酒本舗を盛り上げていくのに、雪が障害となるという声が上がったという。しかし、小笠原氏が言うことにはその雪こそが重要であるという。確かに、前述のかんずりの作成工程に「雪さらし」は外せない。新潟県各地で冬期の雪を貯蔵し、夏でも冷ややかな空間にする雪室で酒やみそを熟成させるなど、雪の利活用も広がっている。我々新潟県民の生活に雪は切り離せないほど深く根ざしている。雪を邪魔者扱いするのではなく味方につけ、摂田屋を発酵のモデル地域としてほしいと小笠原氏は語った。(森山奈帆・APM職員)

第42回美術館大学

  • 日  時:2018年 7月 7日(土)pm3:00-4:30
  • 場  所:秋山孝ポスター美術館長岡
  • 講  師:秋山孝
  • 進  行:たかだみつみ
  • 題  目:秋山孝の神秘「印刷すること」「手描きすること」について2
  • 参加者数:36名



当テーマにおける前半にあたる第41回美術館大学では、時代とともに普及した印刷メディアが秋山に与えた衝撃を振り返りながら、印刷メディアの魅力について学んだ。後半の第42回美術館大学では、技術の面から具体的に「印刷すること」「手描きすること」を考察した。
まずオランダの画家・モンドリアン(1872-1944)の表現に遡る。モンドリアンは樹をモチーフとした連作を制作している。その連作で描かれる樹木は、写実的な表現から徐々に直線で構成した表現に変化していった。それは、樹木のもつ構造を研究し、形態を単純化していく、まさに抽象的表現への過程が見て取れる。
次にジョルジュ・スーラ(1859-1891/フランス)が提唱した点描主義を考える。スーラは「輪郭線で描かない」ということを発見した。それまでの絵画は輪郭線で描くことが当たり前であったが、確かに実際の世界には輪郭線というものは存在しない。彼は光学と色彩の理論を学び、点で描くことを見つけ出した。今でこそ受け入れられている考え方であるが、当時は相当なセンセーショナルな発表であったに違いない。その当時の衝撃に負けない位の衝撃を秋山は受けた。これまでの「秋山孝の神秘」シリーズにおいて、スーラは幾度も登場していることから、秋山の表現研究においての影響力の高さがわかる。
また、秋山は水墨画にも独自の考え方をもつ。秋山は水墨画は「染み込むことで描く技法」と説明する。和紙の繊維の目に墨が引っかかり残った点の集まりで描かれていると考える。水墨画とスーラの点描主義が繋がるということに意表をつかれた。そして、この「点で描く」ということが、秋山の「印刷すること」につながっていく。

印刷物も網点という点の集まりで構成されている。印刷物を拡大すると、小さな点がたくさん印刷されているのがわかる。この点の大きさ、密度、重なりと地となる紙の関係で図像や色彩を形成している。日本には明治時代初期に石版印刷技術が導入され、B1サイズという大判の大量印刷が可能となった。橋口五葉や杉浦非水などによる三越呉服店のポスターがその代表例だ。当時の印刷技術はとても高く、現代でそれを再現するのは容易ではない。当時の日本の職人は紙の扱いに長けており、紙とインクに関する知識が豊富であったため、高度な印刷技術が可能であったのだと秋山は語る。この印刷技術が後にオフセット印刷へと発展していく。
更にコンピューターの出現によって、印刷による表現の方法が大きく変わることとなる。コンピューターに必要な数列・情報を入力することのみで制作が可能となった。しかしながら、そこにはれっきとした美術家の意識は存在している。この大きな変革にも秋山は衝撃を受けた。
前述でコンピューターは数列での表現であると触れたが、それにより手描きでは困難を要する楕円やベジェ曲線といった整った図形の描写が容易となった。しかし、それに秋山は美しさを感じない。整ったものを壊すことで美しさが生まれる。コンピューターという技術を利用しながらも、それを壊すことで秋山独自の魅力的な表現を生み出したのだ。(過去の「秋山孝の神秘2『点と線』~形を失う形の思考~」でより深く考察した。)
秋山は、現在の表現方法に辿りつくまでに様々な画材、技法での表現を研究してきた。時代と共に画材も変化し、表現も変化してきた。これまでみてきたように、秋山にとって印刷という表現方法も、画材による表現の移り変わりの延長線上にあるのだ。「印刷すること」「手描きすること」は一見対極に位置するように思われるが、秋山の表現活動の上では密な相互関係にあることがわかった。(たかだみつみ・APM学芸員)

秋山孝の神秘4「印刷すること」「手描きすること」展 開催記念懇親会

  • 日  時:2018年 7月 7日(土)pm5:00-7:00
  • 場  所:秋山孝ポスター美術館長岡
  • 参加者数:38名

「秋山孝の神秘4『印刷すること』『手描きすること』展」開催を記念して、懇親会を開催しました。


第41回美術館大学

  • 日  時:2018年 5月 12日(土)pm3:00-4:30
  • 場  所:秋山孝ポスター美術館長岡
  • 講  師:秋山孝
  • 進  行:たかだみつみ
  • 題  目:秋山孝の神秘「印刷すること」「手描きすること」について1
  • 参加者数:42名



館長・秋山孝のポスター作品表現の秘密を解き明かすことを研究目的としているシリーズ「秋山孝の神秘展」も4回目となった。今回のテーマは「『印刷すること』『手描きすること』」だ。現在の秋山の作品は、ポスターや書籍など「印刷」を経て完成形となるものが中心だが、かつては画家を志し油絵などで描いた絵画作品を創作していた。その画風は、現在の作品とは大きく異なり、同一人物が創作した作品なのかと驚く。では、なぜ秋山は自身の創作活動を「印刷」という手法にシフトしていったのだろうか。美術館大学では、その謎について秋山自身が解説した。例の如くこの研究は秋山が影響を受けて来た過去の表現を振り返ることから始まる。
【印刷すること―ポスターの魅力/1960年代音楽と大判印刷メディア】
1960年代、秋山孝学生時代―。
アメリカやイギリスを中心として若者たちによる新たな文化のムーブメントが起こっていた。彼らは反戦や人種差別などの社会への不満や、新たな生き方・自己表現の手段として、ファッションや音楽を生み出し、その流れは大きく瞬く間に世界を飲み込んでいった。日本も然りである。日本は高度経済成長の最盛期。エネルギーに溢れ、日本の生活も変化し、海外からのカルチャーがどんどんと入ってくる中、それは秋山青年にも大きな影響を与えた。
ビートルズを筆頭に、ローリング・ストーンズ、ボブ・ディランなどの音楽が世界的に大ブームを起こした。音楽は言葉の違う異国の人間でも共感できる強いメッセージ性を持つ。その音楽のメッセージをさらに強めたのが、グラフィックであった。彼らのポートレートやポスター、レコードジャケットは、それまでにはなかった最新の印刷技術を巧みに使用された表現技法であり、新鮮でかっこよく、美術を学ぶ秋山青年の心をガッシリと掴んだ。それは、彼に「もはや美術大学の教授から学ぶものはない」と思わせるほどであった。それまで秋山は、油絵など絵筆で描く表現を研究していたが、これらの新たな技法を知ったことで彼の考え方は大きく変わった。「印刷とは何か。」「色を塗るということはどういうことか。」という疑問をここで持ったことが分岐点となったと秋山は自身を振り返る。
秋山に影響を与えた表現者の代表格にいたのがミルトン・グレイザー(1926-)だ。ロゴ「I ♡ NY」を作成した人物だ。このデザインは、紙のみならずあらゆる媒体に印刷され、一目で伝わるコミュニケーションの速さを持ち、今なお世界的に有名である。また、アンダーグラウンド・コミック運動の創始者ロバート・クラム(1943-)の描くイラストレーションにも大きな衝撃を受けた。彼が手掛けたコミック誌「ミスターナチュラル」は秋山の大事なコレクションの1つである。

【原画表現から印刷メディアの自立/時代への影響力】
1960年代後半になると、社会への不満が募った若者たちによる学生運動が勃発した。その発端がパリ五月革命(1968年5月)だ。大学制度の改革を求めたパリ大学の学生と大学側が対立し、学生と警官隊の激しい衝突に端を発し、フランス全土に広がった社会変革を求める大衆運動である。日本でも東大紛争(1968-1969)や日大紛争(1968-1969)などの学園紛争が起こっていった。秋山の通う多摩美術大学でもそれは起こった。当時は授業どころではなかったそうだ。そんな争いの場でもグラフィックは活躍した。学生たちはスローガンをかいたポスターを印刷し大量にばら撒き、団結力を高めた。劣悪な環境で印刷されたそれらのポスターは、決して美しいものではなかったが、強いメッセージ性を持ち、チープさの中に力強さと魅力があった。他にも、中国で起こった文化大革命(1966-1977)で毛沢東を讃えるプロパガンダに利用されるなど、ポスターというメディアは時代の動きと共にある。今はインターネットを使って簡単に素早く情報のやりとりができるが、1960年代の激動の時代において重要な役割を担っていた印刷物の持つ魅力、能力を秋山はその渦中で見てきた。そして、その力を今でも信じている。
憧れのアーティストについて話をする秋山の姿は、目がキラキラと輝き青年に戻っていた。当時はレコードを買うとポスターが付いてきた。秋山青年はそのポスター欲しさにレコード屋に通ったという。その時の熱い想いが秋山のポスターへの情熱に火を付け、それが現在も燃え続けているのだろう。(たかだみつみ・APM学芸員)

秋山孝の神秘4「印刷すること」「手描きすること」展 開催記念懇親会

  • 日  時:2018年 5月 12日(土)pm5:00-7:00
  • 場  所:秋山孝ポスター美術館長岡
  • 参加者数:42名

「秋山孝の神秘4『印刷すること』『手描きすること』展」開催を記念して、懇親会を開催しました。


秋山孝の神秘4「印刷すること」「手描きすること」展 掲載情報

■2018.04.27  「HOT PEPPER 2018年5月号」 p.6


■2018.04.19  「Jagda Map 5_6」



ふなばしアンデルセン公園子ども美術館
JBD2017「赤い靴」受賞・入選作品特別展示
2018.4.18(水)~7.22(日)

  • 展示期間:2018年 4月 18日(水)~7月 22日(日)
  • 場  所:ふなばしアンデルセン公園子ども美術館 2階展示室前通路
  • 入館者数:11,087名



2018年4月18日(水)~7月22日(日)までの期間、千葉県船橋市にあるふなばしアンデルセン公園子ども美術館において、日本ブックデザイン賞(JBD)2017の「赤い靴」受賞・入選作品を展示した。日本ブックデザイン賞は、秋山孝ポスター美術館長岡(APM)が主催する公募事業である。子ども美術館でのJBD作品の展示は昨年に引き続き2回目である。
ふなばしアンデルセン公園は、1987年にワンパク公園として開園、1989年に船橋市がデンマークのオーデンセ市と姉妹都市提携を結んだことから、同市出身の童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンの名にちなんで「ふなばしアンデルセン公園」と改称した。APMの館長・秋山孝は、ワンパク公園」が開園する準備段階から関わっており、現在もイベントポスターの作成を請け負うなど付き合いは続いている。その縁もあり、昨年よりふなばしアンデルセン公園子ども美術館の協力を得て、JBDの受賞・入選作品の中からアンデルセン作品を展示していただいている。昨年の展示作品は「マッチ売りの少女」であった。多くの人の目に留まり、装画・装丁の魅力、ブックジャケットの美を伝えることができたのではないだろうか。今年は「赤い靴」作品33点を展示した。昨年に引き続き、多くの人々にブックジャケットの魅力を伝えてほしい。
また、昨年はJBD2017展において「第9回アンデルセン公園きりがみコンクール」の受賞作品をポスターにしたものを展示した。「アンデルセン公園きりがみコンクール」とは、アンデルセン童話の世界を切り紙で表現した作品を審査する、今年で10回目を迎えるコンクールである。こうした相互のやりとりによって、「アンデルセン公園きりがみコンクール」「日本ブックデザイン賞」双方の活動が盛り上がっていくことは喜ばしい。
日本ブックデザイン賞のブックジャケット部門の魅力のひとつは、与えられた課題に対し応募者が出した答えが見えることであると思う。「赤い靴」という課題に対し、応募者はその作品をどのように解釈し、読者に何を伝えたいと考えたかが作品に表れる。それが千差万別で非常に面白い。タイトル通りの赤い靴を描いた作品が多いが、踊る少女を描いた作品、靴を連想させるリボンを描いた作品など、様々な表現を見ることができる。秋山館長は以前、「ブックジャケットは本と読者を繋ぐ最初の扉である」と語っていた。読者の想像力をかき立て手にとらせる「最初の扉」を見ることのできる場所が、長岡だけでなく、船橋市にまで広がったことに感謝する。 (森山奈帆・APM職員)


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