2019年1月19日(土)、新潟県長岡市のアオーレ長岡の1階にあるホワイエ・ホールAにて、長岡市立上組小学校(上組小)6年生による企画展「いいねぇ上組地域の宝~受け継がれてきた歴史に感謝~」が開催された。上組地域とは上組小の学区であり、児童の生まれ育った地域である。秋山孝ポスター美術館長岡(APM)は、6年生より建物の外観、内観の写真を撮影させてほしいという依頼を受け、企画展に協力した。
撮影当日は3名の6年生がAPMを訪れた。スタッフに挨拶をした後、APM館内の一番魅力的な場所を考えながら撮影を始めた。APM滞在時間はほんの10分程度だったが、どの角度から撮影するか3人で話し合いつつ進めていた。
企画展はアオーレ長岡の正面広場から少し進んだところにあるホワイエ・ホールAで行われた。広場では数人の6年生が道行く人に声をかけ、展示を見ていってもらうよう誘導する姿が見られた。ホール入り口には受付が設置され、記名すると手作りのしおりをいただいた。しおりには、6年生が撮影したと思われる上組地域の写真が使われていた。
ホール内はいくつかのブースに分かれていて、そのひとつひとつに上組地域のスポットが展示されていた。各ブースには6年生が描いた上組地域の風景画(上組地域八十景)や、そのスポットがどこにあるかを示す手作りの地図、そのスポットにまつわるクイズなども一緒に展示してあった。また、各ブースには6年生が待機しており、自分たちの考える各スポットの魅力を説明したり、上組地域八十景の自分の作品について解説したりして来場者を楽しませていた。
企画展「いいねぇ上組地域の宝~受け継がれてきた歴史に感謝~」は、6年生が「総合的な学習の時間」の中で取り組んできた活動である。自分たちが育った地域の魅力を見つけ、それを絵画で表現し、作品解説で伝えていた。APMのブースでは、APMの外壁のレンガが魅力だと考え、ひとつひとつ色を塗り分けたと作品を解説していた。確かにAPMの南側外壁は左右で微妙に色が異なる。よく見ないと気付かない部分だがしっかりと表現されていた。当日の役割は作品解説だけではない。前述した誘導や受付の他、アンケートをお願いする担当もおり、積極的に声掛けをしていた。それぞれがそれぞれの役割の中で来場者に楽しんでもらおうと行動していた。そのような企画展に協力できたことはAPMにとっても喜ばしい。彼らにとってAPMは、上組地域の魅力的な場所のひとつであり、地域内外の人々にその魅力を伝えるべき場所であると考えられている。これからもAPMが地域の誇りであるよう活動していきたい。(森山奈帆・APM職員)
「メッセージイラストレーションポスター展10」開催を記念して、懇親会を開催しました。
今年も秋山孝ポスター美術館長岡(APM)主催のコンペティション・日本ブックデザイン賞(JBD)を開催した。今回で4回目となった。応募総数418点(一般の部:196点、学生の部:222点)の内、厳選なる審査の結果決定した入賞・入選作品全247点(一般の部:136点、学生の部:111点)をAPMにて展示した。展示期間中の10月13日(土)には授賞式も執り行った。
JBD2018の特徴は、応募部門にポスター部門が加わったことと、応募作品がデータでのエントリーになったこと(ブックデザイン・セルフパブリッシング部門、ブックデザイン・パブリッシング部門を除く)だ。ポスター部門は秋山館長がずっと設置を切望していた部門だ。ポスター専門の美術館が主催するコンペティションとしてより意味のある内容となった。
今年の授賞式も全国から多くの方にご列席いただき盛大な式となった。APM館長・審査委員長の秋山孝は挨拶で、本のコンペティションは難しいと言われている中、長岡という地方の町で4回目の開催を迎えられたことへの感謝を述べた。それは応募者をはじめ、関わっている方々の意思や意識の高さ故であると強く感じ、この先も工夫と改善を繰り返し、力の続く限り継続していきたいと語った。続くAPM運営委員会副会長・牧野忠昌氏の挨拶、長岡市副市長・水澤千秋氏と協賛の北越コーポレーション株式会社長岡工場長・谷口喜三雄氏の祝辞では、いずれも長岡市の歴史を絡めたお話を頂戴し、長岡市が歴史と共に文化が育まれ続けている地であるということを再認識した。谷口氏の祝辞の際には、今年も協賛いただいたことへの感謝状を贈呈した。
賞状授与では、受賞者がそれぞれ受賞の喜びや今後の活動への意気込みの言葉を語った。また、授賞式後の懇親会では、列席した入選者への賞状授与も行い、皆さんの喜びの表情で会場はいっぱいとなった。
懇親会では審査員の方からお話しいただくのが恒例となっているが、応募者の方々にとっては、とても興味深い時間ではないだろうか。その中で大迫修三氏は、主張が強い作品や挑戦的な作品をみることができるのでJBDの審査は面白いと感想を述べられた。
JBDは来年5周年を迎える。同時にAPMも創立10周年という節目の年だ。懇親会でのNPO法人ながおか未来創造ネットワーク・笠原典明氏の祝辞で、JBD2019の作品展示をAPMだけでなく、長岡駅前にあるシティホールプラザ・アオーレ長岡でも開催する計画が進行中であることが発表された。ますますパワーアップするJBDへの期待が高まる中、JBD2018は幕を閉じた。(たかだみつみ・APM学芸員)
2018年9月29日(土)、新潟県建築士会長岡支部による「建築士の日・長岡まちなみ魅力発見隊 合同開催」が行われた。山古志地域を中心とした長岡市内を見学し、美しい山里・山古志の魅力と、中越地震から14年の復興の道程を、各地を巡りながら特別講師の渡辺斉氏が解説するというイベントである。
山古志地域では、稲刈り前の棚田や、水没した木籠集落の他、虫亀地区の「写真の家」、直売所「郷見庵」、やまこし復興交流館おらたる、山古志竹沢復興公営住宅などを見学する。秋山孝ポスター美術館長岡(APM)も見学場所のひとつとして行程に組み込まれ、参加者が訪れた。
APMは1925年 (大正14)に建てられた大正モダニズム建築である。長岡商業銀行として建てられたこの歴史的建造物は、1929年(昭和4)に六十九銀行に合併、1942年(昭和17)に北越銀行宮内支店、1970年(昭和45)には田上商店倉庫となり、2009年(平成21)にAPMとして開館した。APMとなってからも2009年の長岡市都市景観賞受賞や2016年(平成28)に国の登録有形文化財登録など歴史を刻んできた。APMのリノベーションを請け負った㈱高田建築事務所の会長であり、APMサポーターズ倶楽部会長の高田清太郎氏は、APMを開館することになった経緯や、リノベーション時の苦労などを説明した。
2004年(平成16)には中越地震があり、APMも被害を受けた。美術館として開館する前だが建物は存在しており、新潟県内で約3,000もの家屋が全壊する中、大正生まれのAPMは倒壊することなく残った。その後、リノベーションを経て美術館へと生まれ変わるのだが、南側外壁の窓ガラスはひび割れたままになっている。これは中越地震の時にできた亀裂で、現在は危険でないよう保護のガラスが設置されている。このガラスのひび割れが魅力的だと私は思う。APMを案内するとき、職員が雄弁に解説するよりも、ひび割れたガラスがただそこにあるだけで説得力が生まれる。長岡まちなみ魅力発見隊の参加者も興味深そうにそのガラスを眺めていた。
APMの建造物には93年の歴史がある。銀行だったころ、倉庫だったころ、そして今は美術館である。戦争も地震も経験し、宮内の町とともに年を重ねてきた。これからも新しい歴史を重ねつつ、今までの歴史を伝え続けていきたい。(森山奈帆・APM職員)
2018年8月18日(土)~9月30日(日)、新潟県西蒲区にある中之口先人館の先人館ギャラリーにおいて「水と土の芸術祭2018 地震ポスター展」を開催した。中之口先人館での展示は、昨年に引き続き2回目である。今回は3年に1度、新潟市内で開催されている「水と土の芸術祭」の会期中であった。
地震ポスター展では、多摩美術大学・教授であり、秋山孝ポスター美術館長岡(APM)の館長・秋山孝が始めた「地震ポスター支援プロジェクト」のコレクションの中から厳選した64点を展示した。地震ポスター支援プロジェクトとは、災害支援においてデザイナーのできることは何かということから、ポスターの力を使い災害を忘れず記録することを目的にスタートしたプロジェクトである。きっかけは2004年10月23日に新潟県中越地方で発生した最大震度7の中越地震である。故郷・長岡市が被災したことを受け、秋山館長が同年12月にスタートした。
8月25日(土)には関連イベントとして、出品者による作品解説が行われた。秋山館長の他、高橋庸平氏、堀池真美氏、たかだみつみ氏、大町駿介氏、鷲尾恵一氏、橋村実里氏ら出品者が自身の作品を解説した。また、地震ポスター展の意義についても説明があった。日本には多くの地震の記録が残っており、古いものは416年にまで遡る。それ以降も数え切れぬほどの地震が日本を襲い、それらが記録に残されている。それにもかかわらず、我々人間はすぐに忘れてしまう。だからこそ、ポスターの力を使って災害の記録を風化させないよう訴え続けることが大切であると秋山館長は述べた。
今年は中越地震発生から14年目である。秋山館長が語った通り、当時の記憶はしだいに薄れ、断片的となってくる。人間は忘却していくものだからそれも仕方ない。ただ、忘れたままにするのではなく思い出し、どう対処するか考えることが大事なのではないか。秋山館長らの地震ポスターは災害を忘れてはならないとメッセージを発信している。そのメッセージを受け取った私たちはどうするべきなのかが問われているように感じた。(森山奈帆・APM職員)
「秋山孝の神秘4『印刷すること』『手描きすること』展」開催を記念して、懇親会を開催しました。
「秋山孝の神秘4『印刷すること』『手描きすること』展」開催を記念して、懇親会を開催しました。